いつの間にかひび割れたバケツ


図書館に通い始めた。
娘に読んでやる絵本が家の中にもう見当たらないからだ。
震災の時、うちにあった絵本のほとんどを東北に送った。
それでも、少しうちの残っていた絵本を今まで読んでいた。
今後は図書館の絵本を読んでいくことにしようと、せっせと通っている次第。

土曜日の昼。
図書館は閑散としていた。
土曜日ってすいてるんだなぁと思いながら、気象のことがわからないから困っている娘に、わかりやすい本はないかと端末で調べ始める。
すると、隣の端末に小さい子がわらわらと集まってきた。
手が届かない小さい子が、触りたがっているが、お姉さんと思われる子が、あかんとたしなめている。
その声が、大きい。
「さわったらあかん」
友達と思われるもう一人も、なにやら話しているが声が大きい。
ここは図書館だ。
親はどこにいる。

カウンターの中にいる司書さんは、蚊の鳴くような声で注意する。
「しずかに…」
その声は、もう少し大きくてよくないか?
女の子たちの声は、大きく、なかなか静かにしない。

喝を入れるべきか?と一瞬頭をよぎった。
私は、公共の場でマナーを守らない子どもに対して、ものすごく腹が立つ。
子どもというより、親に腹を立てているのだと思う。
閑散とした図書館の中で、わが子の声が響いていることを親はわかっているはずだ。
どうやら、絵本のコーナーで、ママ友と話をしている風だ。
温泉などに行っても、髪の毛をまとめずに湯船につかっている子や、プールと勘違いして水しぶきをあげたりする子に、今まで何度も喝を入れてきた。
そんな私が、

「どおしたん?」
女の子たちに、話しかけた。
「どおしたん?なにかこまってるん?」
自分でも驚いた。
今までだったら、「図書館で騒いだらあかんやろ?静かにしなさい」と怒りあふれて厳しく言い放っていた。
どおしたん?といった自分に驚きながら、次々と言葉が出てきた。
「どおしたん?何がしたいの?これを触りたいの?」
「〇〇ちゃんがさわりたいいうてんねん」
「そうなん?でも、これ、大人の人しかさわれへんしなぁ、お母さんにしてもらい」
そんなことを何度か繰り返して話していたら、母親らしき人が通りかかり、何か子どもたちに声をかけたが、通りすがりに声をかけた程度で、大きな声を出していたことに何の注意もなかった。
今の母親?と首をかしげるほどだ。

子どもたちは、私が話しかけたことで興奮が収まったような感じで、静かになった。
この役目、司書さんがしたらいいのとちゃうん?とおもいながら、子どもたちもおさまったし、私の探している本がある場所もわかったので、お目当ての本があるであろう棚へと移動した。
移動してしばらくすると、今度は子どもたちが走り回り始めた。
今後は走るんか…
ほんまに親は、何をしてるんやろ?
少々イライラしながら、今度こそ、喝を入れるか?と思っていたら、
「はしったらあかんねんで!」と今まで一緒に走っていた子が友達に言った。
友達をたしなめる格好だ。
私は、すかさず、
「へえ~~走ったらあかんって知ってたん?すごいねぇ」というと
「お母さんがいつも言うてる」
「そうなんや。えらいなぁ」と口から出た。
そういいながら、また走ろうとするこの背中へ、
「はしらへんねんなぁ。すごいなぁ」といってやった。
それから、その子たちは、私の前では走らなくなった。
母親は、走ったらだめだということは、教えているらしい。
でも、子どもは走る。

わが子やったらどうしてるやろ?
図書館を後にしながら考えた。
わが子は、走るような性格じゃないからなぁと思ったが、走る子やったらどうしてたやろ?と考えた。
走るとか騒ぐとか、もし、その場にそぐわない行動をとった時にすぐに対処するだろう。
騒ぎそうになったら、あかんっていうてるやろ?と。
走りそうになったら、二歩ぐらいでサッと止めるとか、マナー違反をしている状況を長い時間つくったりしない。
それをしても何度でも走ってしまったり騒ごうとするなら、図書館にはまだいけないということなので、連れて出る。
先ほどの、親は、それが私と違うのだと思った。

走ってはいけないことを教えてはいるが、走っている時間を長い間与えている。
騒いではいけないと言っているかはわからないが、大声で話している時間を与えてしまっている。

子どもたちに罪はなく、タイミングを逃さずに教えてやる大人が周りにいないのだ。
あの子たちにとって図書館は、思いっきり走れはしないが、気にしながら走り回っていい場所で、大きな声で話してもいい場所になっているのだろう。

それにしても、私の怒りのバケツに怒りの水が表面張力のように満タンになっていなかったということに驚き、どこで水が漏れたのか、バケツにひびが入っているのか。そのひびはいつ入ったのか…。

これから、マナー違反をしている子にあったら、
「どおしたん?何かこまってるん?」
と、聞くことにしようとおもう。

怒りのバケツのひび割れはそのままでいいような気がする。

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4 Responses to いつの間にかひび割れたバケツ

  • hanakobaby says:

    すごーい(笑)抜けてるんやバケツの水!
    素晴らしいなぁ。
    わたしも抜けてるかなぁ。。
    しかし、その親、非常識やわ。
    わたしも摩耶ちゃんとおんなじ考え方です(笑)
    言わなくてもわかってるやろうけど。

  • maya says:

    バケツにひびが入っているなんて、気がつかへんかってんけど。
    「こら!」と怒るより、「どうしたん?」という方が、言った後のこちらの気分も違いました。心拍数が上がらない感じ(笑)

    子どもはタイミングやな。

    私たちは、子どもが似てると思ってたけど、親が似てるのか?笑

  • hanakobaby says:

    親が考え方が似てるから育ってきた感じが似てるのかも(笑)

  • maya says:

    なるほどね。子どもにかける言葉は似てくるのかもね。

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